就職が難しい学生たちへの激励のメッセージ

 もうすでに、夏休みを迎えるというのに、まだ、就職先が決まらない、学生たちが、私が勤務する都留文科大学にもいる。私の4年のゼミ生たちも、就職活動に悩み、苦しんでいる。すでに、何十社も受けたが、内定をもらえず、自分自身に自信を失ってしまい、精神的に落ち込んでしまっている学生もいる。

 

 いくら、現実的な社会情勢が厳しいとはいえ、学生たちに対して、面接時において、各企業の人事担当者の対応や言葉使い、具体的な扱いなどの様子を聞いてみると、大変、失礼な対応が多いことに驚く。

 

 「君は世の中を甘く考えている。まだまだ厳しい現実社会に適応できる精神年齢には至っていない。言葉使いが、子どもっぽい。大学卒の割には、専門性が低い。英語力が余りにも弱く、大学で何を学んできたのか。大人としての見識と判断力の脆弱性を感ずる。私たちの企業に就職しようとする意思や目的が不明確だ。君たちの親はどんな教育をしてきたのか。」など、言いたい放題である。

 

 発言の内容を精査すると、就職時において採用予定の学生に対して、人間的な評価や採用の有無の判断を行うために必要な発言内容だとは思えない。本人の個性や人格を否定し、採用不可にするための恣意的な発言ではないかと思う。

 

 学生たちは、今後の日本社会の中で、社会人として、精一杯働き、税金を納め、家族を養い、子どもたちを産み育て、社会的な役割を果たし、高齢者を支えていく、大切な主体者・後継者である。

 

 このような将来を託す重要な若者に対して、現実社会は、余りにも過酷な対応に終始している。確かに多くの企業は、経済的に困り、人件費を中心として、各種の経常経費の節減を大胆に実施しなくてはならない厳しい事情を抱えていることは、ある程度は理解できる。

 

 しかし、何万人もの大学生が、未就業になってしまう現実を鑑みると、やはり、人材の受け皿としての社会体制が、あまりにも未成熟で無責任である。世界を広く見ても、日本の明治維新の動きを見ても、多様な人材育成に対する施策や具体的な取組み、社会体制などは、充実し、手厚いものがあった。

 

 まさに、日本の現在までの高度成長を支えてきたのは、先進的で多様な教育システムの実効性に依るところが多い。当然、人材の受け皿として、さらに、社会人・企業人の教育の担い手として、企業の役割も大きいものがあった。

 

 松下幸之助は、松下電器が企業化し大きくなった頃、不景気が来た時に解雇に断固反対して、現状の雇用を守り、若手職員の雇用確保を断行した。余剰人員を抱えている中で、どんな対応をしたのかというと、余剰人員の生産部局から営業部局への配置転換と機能強化を図り、若手職員には時間をかけた熟練工からの技術移転・教育と新規商品の研究開発に当てた。

 

 その結果的、職員の意思が松下電器に一体化・共有化して団結力が高まり、生産性と開発力、営業力が格段に向上した。まさに、人材とは企業の財産であり、資源である。人材育成を怠らず、人材を大切にして、人材確保に対して景気の有無に左右されず、資金投資する企業は、結果的には成長することを実証している。

 

 人を育てられない、大切にできない企業は、目的を失った、利益至上主義の盲目的な利益集団、収奪集団としか思えない。最近、企業の総会において、社長を始めとした役員の年俸が発表されたが、何億円もの高額な給与を受け取っている人が多いことに驚いた。

 

 私見ではあるが、この資金の減額分により、一定割合の若手職員の雇用確保を図ってもらいたいし、人材育成のための研修制度や経済情勢に影響されない人材確保のための基金造成なども進めることができるはずだ。個人的には、こんなにも高額な給与を得て、どんな贅沢をしようとするのか理解できない。

 

 所詮、他人の財布の使い道の是非論ではあるが、ビル・ゲイツなどの社会的企業家の活動実態と比較すると、人間的な貧困性を感じ得ない。個人的なお金への執着は、私は貧乏人ではあるが、理解不能である。しかし、企業人としては、まずは、学生たちへの雇用機会の拡大と場づくりへの取組みを期待する。

 

 ほとんどの経営者は、先輩に育てられ、今の立場があるのだと思う。会社大切・株主大切・利益維持大切の本音は分かるが、ワークシェアリングを始めとした、今日的な資金配分、役割分担の経営努力や工夫を行い、人材の受け皿の確保を進めて行ってほしい。

 

 大学生たちも、今の厳しい現実に負けずに、永き人生の中で、例えば、一つの試練の時期だと考え、自信を失わず、何事にもめげずに、いろいろなことに前向きに取組んでもらいたい。

 

結果的には、今年、就職が難しかったら、自分自身を見つめ直す、自分探しの時間が確保できたと考え、多様な体験や経験プログラムの蓄積を検討したらいい。

 

 例えば、英語力の格段の強化、教職や行政職合格のための予備校への入学、簿記や不動産取引などの資格取得のための専門学校への入学、NPOや農業、企業などでの長期インターンシップの体験、海外旅行などに挑戦していると、多分、一年は、すぐに過ぎてしまう。

 

 この間に、自分探しを着実に行うことによって、今後の人生行路を明確にできる。今度、就職活動に取組んだ時には、面接時を含めて自信に満ちた対応が取れるはずだ。人生は長い。慌てて、少しねじれた、不本意な人生行路には、いつかは、無理と歪が起こる。

 

 確かに、不安要因を抱えたままに就職していくことも間違ってはいない。少なくとも、十年間程度は、選択した職場において、しっかりと耐え、専門性を身につけ、社会人・企業人として成長して行ってもらいたい。

 

 しかし、地域や弱者に対しての世の中の不合理性や理不尽性などへの素直な怒りの気持ちは、劣化させずに、新たな社会的課題解決に取り組んでいってもらいたい。若者には、無限の可能性が潜在的に内在している。「捨てる神あれば拾う神あり」だ。

 

 思考の時間や多様な経験知は、今後の人生にとって無駄になるものではない。他人の判断や画一的な試験結果に影響されずに、自分自身の個性や特性をさらに向上させ、活かしていく道や手段を、めげずに模索してもらいたい。

 

 グラウンドワーク三島は、迷える子羊たちを何時でも大歓迎する。清冽な富士山からの湧水に浸かりながら、いろいろな人生経験者との話し合いなどを通して、ゆったりと、自分探しができる好条件の素敵な環境だと思う。就職活動などで、疲れている若者・大学たちよ、気軽にお立ち寄りあれ。

2010/7/26 9:44 ( メイン )
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