地域の豪族であった寺尾源兵衛は、三島市内11カ村の耕地を灌漑するために、上流部の楽寿園小浜池に湧く、富士山からの湧水を水源とする農業用排水路(源兵衛川)を室町時代に造りました。
この源兵衛川は、全長が1.5kmあり、市街地を流れた終点部に、湧水の水温を上げるために造られた農業用ため池である「中郷温水池」があります。
この温水池は、三島市においては唯一・最大の池沼であり、下流13集落、216ヘクタールに農業用水を供給する重要なため池です。また、ため池南岸からは、緑に囲まれた水面に「逆さ富士」が美しく映り、三島を代表する優良な「水辺の風景」を形成しております。
2010年3月、この「中郷温水池」が農林水産省「ため池百選」に、静岡県で唯一選ばれました。これは、多様な生物の生息地(大ビオトープ)として、また隣接する小中学校による実践的な環境教育の場や市民の憩いの場としても多目的に利活用されている点など、グラウンドワーク三島が中郷温水池の価値を発見し、推薦したことによるものです(下記リンクはいずれも別ウィンドウで開きます)。
この温水池の親水整備事業は、源兵衛川の水辺再生事業の一環として造成されたものであり、農林水産省の水環境整備事業を活用して、1990年度から施行されたものです。
従前のコンクリート造りの護岸を著しく改変し、水辺には散策路と緑地帯を配置し、池底は、動植物の多様性を確保するための多自然型工法の採用と二か所の中洲造成による鳥類の生息地の確保を図るなどの「エコロジーアップ」を進めました。その結果として、現在、延べ100種類以上にも及ぶ、多種多様な動植物の生息場所になりました。
また、地域住民や土地改良区の合意形成、行政の許認可、環境NPOの理解には多くの時間を要しましたが、グラウンドワーク三島が、利害者の権利調整を行う中間組織としての役割を果たし、住民・NPO・専門家・行政・企業そして管理者である中郷用水土地改良区などとの一体化した協働関係を構築して、「住民参加・住民主導」の公共事業の推進に貢献しました。
温水池で温められた農業用水は、中郷地区の水田地帯216ヘクタールに配水・供給されているのに加えて、多様な生物の生息地(大ビオトープ)として水辺自然環境の再生と復活が成就して、隣接する三島南小学校や南中学校による実践的な環境教育の場や市民の憩いの場として、農業施設の機能を超越した「地域資源・環境資源」として多目的に利活用されています。
中郷温水池 掲載紙
PDFファイルはいずれも別ウィンドウで開きます。
- 造景 1997年10月号掲載(PDFファイル、約436KB)
- 伊豆日日新聞 2005年2月12日掲載(PDFファイル、約742KB)
- 静岡新聞 2008年10月5日掲載(PDFファイル、約544KB)
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