源兵衛川が2つの「世界遺産」に登録されることを待望(平成28年9月30日)

2016/10/1 16:00 投稿者:  gwmishima

事務局長のつぶやき 平成28年9月30日
源兵衛川が2つの「世界遺産」に登録されることを待望

 

 NPO法人グラウンドワーク三島と中郷用水土地改良区は、連名で、9月30日午後5時、本年度に創設された「世界水遺産」に登録するために、私たちが再生・管理に取り組んできた「源兵衛川」を申請した。

 

 申請名は、「パートナーシップによる源兵衛川の管理・再生システム」とした。1990年当時、源兵衛川は、雑排水が流されゴミが捨てられ、汚れた状態が約25年間も続いていた。すると三島市民は、行政や議員も含めて、汚い、臭い、恥ずかしい川だから、コンクリート製の暗渠で埋めて隠してしまおうと計画した。人は被害者にもなり、「水の都・三島」の宝を壊す破壊者にも容易に変身できることを実証している。

 

 そこで、私たちは、グラウンドワーク三島を結成して、多様な人々とのパートナーシップによる新たな「水管理システム」を創り、飽くなき川掃除の継続力と情熱的な行動力、先駆的な発想力などとの有機的な結合により、見事に「原風景・原体験・原自然」の清流を再生・復活させた。

今では、源兵衛川の各所で蛍が延べ1,800匹近く乱舞し、子どもたちが川遊びや魚とりを楽しめる美しい川が見事に蘇っている。人は水辺環境の破壊者から、再生の主体者に変身できることを実証した。

 

 今回の世界水遺産は、世界水会議が自然環境との健全な共生を実現した水管理システムを登録、表彰するものである。登録基準は、「100年以上にわたり世代を通じて運用されていること」などである。同委員会で審査して、11月25日から26日に、フランスのマルセイユで開催される、「世界水会議創立20周年記念式典・理事会」で登録地区が発表される。

 

 源兵衛川は15世紀後半から16世紀初頭(室町時代後期)に、三島の有力者・寺尾源兵衛が楽寿園内小浜池湧水群を水源として開削した農業用水路である。開削から400年以上が経過した現在でも、下流の農業地帯は、源兵衛川から安定的な灌漑用水の供給を受けている。

 

 今回の審査のポイントは、地域コミュニティとの関わり方である。汚れた農業用水・都市河川を地域総参加により、再生・復活してきた経過と事実は、農業者と市民とが相互の地域コミュニティを協働・連携させた、新たな水管理システムを創造・構築できたことに起因している。

 

 まさに、今回の世界水遺産登録の目的にかなう適地だと考え、強い思いと願いを込めて申請した。多くの関係者が、ふるさとの宝・源兵衛川を思い、大切にする心と日々の努力を、世界遺産として、国際的に評価していただけることは限りない喜びと誇りになることは間違いない。

 

 実は、源兵衛川に関しては、昨年、国際かんがい排水委員会主催の「世界かんがい施設遺産」に「源兵衛川(用水路)」として登録を申請した。結果は、「保留」となり、現在、審査後に求められた詳細な施設情報をすでに委員会に提出済みであり、審査が進んでいると担当の農林水産省から聞いている。結果は、11月9日から12日に、タイのチェンマイで開催される、「世界かんがい排水委員会理事会」により審査・発表される。

 

 11月中は、とにかく何かと忙しくなりそうだ。11月9日が、「世界かんがい施設遺産」登録の発表日、11月25日が、「世界水遺産」登録の発表日の予定になっている。源兵衛川の類まれな普遍的な価値や貴重な水の文化性・歴史性が、「日本の宝」から、「世界の宝」に、ランクアップ・ブラッシュアップする記念すべき日が来る。

 

 現在、三島市では三島駅南口に高層マンションとホテルが建設される開発計画が、行政により進められている。本当に、民間企業に一方的に依存した開発が、将来的に考えて、適切な結果を地域にもたらすのか不安を覚える。地下水への悪影響や景観阻害、水辺を活かしたまちづくりとの違和感など、課題と懸念は大きい。

 

 市民運動の限界を感じ、悔しさと力不足の切なさで心が折れそうだ。まちづくりの方向性の結果は、何年後かに現出する。次世代に「負の遺産」「懸念・心配」を大人の身勝手な判断でバトンタッチしていいのかと思う。今の人間がそんな先のことまで、経済的・発展的な問題を読み切れるものなのか不安だ。

 

 着実に成果を残してきている、水辺空間を活かした平面的なまちづくりが、三島の特性に見合ったまちづくりだと判断・評価できないものなのかと強く疑問を感ずる。

 

 今回の審査結果は、私たちが目指してきた水辺を活かしたまちづくりの方向性の正しさと高層マンションに依存した三島市が考えるまちづくりとの比較対象になると考えている。

 

 まずは、源兵衛川が、2つの「世界遺産」に登録されることが、私たちの考え方の正当性の実証となり、世界的な評価に拡大していく。今後、これらの正当性と先進性を、国内外に強く訴えていきたいと熱望し、朗報を待望する。

 

 

 

■新聞記事

 2016年9月22日静岡新聞(源兵衛川「世界水遺産」へ申請準備)(PDFファイル)

 

 

■申請書

 世界水遺産申請書・概要版(英語)(PDFファイル)

 

 

 

 

 

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