グラウンドワーク・インターンシップの説明会を終えて

2010/7/18 9:44 投稿者:  yhonda

 平成22年7月15日に、ふじのくにNPO活動センターにおいて開催された説明会において、内閣府「地域社会雇用創造事業」の一環としてグラウンドワーク三島が実施する「グラウンドワーク・インターンシップ」第1期分の説明会が終了した。

 

 現在までに、7月15日を申し込み期限として、懸命な試行錯誤の募集活動を展開するとともに、5月18日から7月15日までの間、静岡県、山梨県、愛知県を中心として、都内の大学を含め27箇所において、私自身もほとんどの会場に出向いて説明会を開催した。

 

 その結果、職員たちの懸命な努力や旧知のNPO仲間の支援、全国のグラウンドワーク活動団体の多大な努力により、また多様で重層的な広報戦略の相乗効果とあいまって、7月15日の段階において、目標の400名を完全に確保できる見通しになった。なお、締切日以降についても、問い合わせや郵送分などがあり、さらに、締切日を少し延長したこともあって、最終的には、450名に近付くことになるのではないかと予測している。

 

 この結果は、一体、何を物語っているのであろうか。今回の事業の推進方法として、まずは、私と過去にNPO活動に関わり、濃密な関係があった県内の市民活動団体やリーダーの協力と支援を受け、説明会の開催を企画・実施した。

 

 どこの会場も聴講していただいた方々の中には、昔、県庁のNPO推進室長時代にお世話になった関係者の方が多く含まれ、またその関係者を通して、さらに多くのNPO関係者に集まっていただいた。当時は、今から10年ほど前であり、NPO法が施行され、国民の関心が、NPOやボランティア活動に向けられたNPOの「胎動期、創成期」の時期だったといえる。

 

 私も、当時は、県内各地をくまなく回り、NPOの社会的役割や使命、NPO法人の重要性、海外のNPOの先進性や有益性、ボランティア活動の今後の方向性、市民・NPO・行政・企業との連携と協働の重要性なとについて、懸命に説明、解説して歩いた。現在、静岡県内には、約1000団体弱のNPO法人が存在しているが、私自身が、直接的に各法人の代表者に認証書をお渡ししたのは、400団体くらいだと思う。

 

 今回の地域社会雇用創造事業の実施をきっかけとして、会場で会ったNPO関係者から、現在のNPOの実態や悩み、苦労、課題、行政や政治への要望などを聞くことができた。どこのNPOも、現在まで、一生懸命に試行錯誤を繰り返しながら、懸命な努力を継続して来ているが、現実は、多様な問題を抱え、なかなか厳しく、当初の理想やねらい通りには、組織や活動が拡大、強化されていない厳しい現実を聞いた。

 

 昨今、行政の機能が脆弱化し、制度疲労や硬直化の拡大によって、その公益的な役割を充分に果たせない状況の中で、弱者や高齢者などに対して、きめの細かい人間的なサービスを提供できるNPO・市民活動団体の社会的な役割は重要度を増している。

 

 しかし、現実社会では、地域の社会的な評価や行政からの補助金的な支援など、特に、人材確保や資金調達など組織マネジメントに関わり、各NPOの脆弱性を感じた。円滑で持続可能な組織運営を考えた時に、この「マネジメント力」が大変に重要な役割を持ち、組織のリーダーや事務局長レベルにおいては、必要不可欠な資質、能力だと思う。

 

 一般的には、マネジメントとは、人材、資材、資金、事業計画、管理、リスクなどを指している。NPOといえ、常に、新たなる支援者やスタッフを確保し、教育し、共有意識を醸成していかなくては、組織は細り、劣化、停滞してしまう。また、一定の人件費を委託費や助成金、補助金などから常態的に確保しなくては、人並みの給与や待遇を提供できず、優秀な若手の人材確保も困難となり、組織の発展的な展開は難しくなる。

 

 さらには、斬新で創造的な提案や事業計画策定の知恵とアイデアがなくては、地域の難題や問題点を具体的に解決することはできず、市民の賛同や支援、信頼などを得ることはできない。結果として、会費や寄付金が集まらない。

 

 すなわち、NPOやボランティア団体などを「市民会社・市民企業」だと考えた時には、このような状態では、早々と倒産の憂き目に陥ってしまう。無償の奉仕の精神が、マネジメント力の強化を阻害し、組織のあり方を活動重視に偏重させ、困難に立ち向かうための多様なスキルアップへの取組みを敬遠させ、結果的には、組織力の劣化を助長させているといえる。

 

 さらに、NPOのさらなる分析・評価を行うなら、「ビジネス力」が著しく弱い。NPOの世界では、「稼ぐ」とか「有償」いう言葉は、余り聞かれない。何故だろうか。私は、NPOの収入を考えた時に、会費・寄付金・助成金・補助金・委託金・協賛金・自主事業費・雑収入などがあると思う。これらの勘定項目をバランス良く、確保することが、NPOにとっての稼ぎになると思う。

 

 支出としては、事業費と固定費がある。この収入と支出との差額が、損益になる。企業は、この損益の結果を追い求め、ひたすら、利益追求を図り、赤字の場合には、厳しい人員削減や徹底した経費節減を進める。企業は、利益をあげ、株主に配当・分配することが、社会的な使命なのだ。

 

 こんな理屈で、社会や地域が本当に豊かになるのであろうか。この問題を解決できるのが、NPOだと思う。無償のイメージが強いNPOのあり方を根本的に見直して、市民会社としての視点、観点から、組織や活動の再認識、再編が必要だと考えている。

 

 そのためには、「ビジネス力」が不可欠であり、資金調達の方法やビジネスプランの策定の手法など、銀行などと融資の交渉ができるくらいの交渉力やプレゼン力、コミュニケーション力が求められる。

 

 多くのNPO法人のリーダーやスタッフに、これらのマネジメント力やビジネス力などが備わっているのであろうか。聞き取りの中からは、逆に、活動やイベントのノウハウはある程度はあるが、それらをさらに発展、事業化させていくための専門的な知識は未熟ではないかと感じた。この領域の課題性により、NPOの成長に限界があるのではないかとも感じた。

 

 そのような観点から、今回のグラウンドワーク・インターンシップは、元気がない地方や地域において、雇用の場を新たに創出するばかりでなく、現在、約4万団体弱あるといわれるNPO法人や約10万団体あるといわれている市民活動団体の組織強化に対して貢献でき、市民会社としての創業を後押しできる研修機会になると確信している。

 

 聴講された多くのNPO関係者からの本事業に対する評価と期待も大変に大きく、今日的な課題に整合性を持った的確な事業だと強く感じた。今後は、第1期の研修事業を適切に実施し、参加者からの高い評価が得られるように努力を傾注する。また、全国各地の人々との水辺の飲み屋での熱い会話や交流を楽しみにしている。

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