日々、社会的変化と前進を続ける英国を訪れて

 平成22年9月12日より19日までの日程により、英国の社会的企業の調査や英国グラウンドワーク連合体との情報交換、グラウンドワークトラストの現場活動などを見てきた。

 

日本の猛暑と蒸し暑さとは比較できない、爽やかで涼やかな天候が続き、気温も15度前後と秋の装いを感ずる晴天になった。また、毎日、英国では稀といわれるほどの透き通った青空が見られ、かなり、ハードな行程ではあったが、体の疲れをあまり感じさせない旅になった。

 

この10年間の間、毎年、英国を訪れているが、今回も驚きの社会的な変化や画期的な政策転換などを学び、英国の先進性をますます実感することができた。英国においても、労働党から保守党・自由民主党との連立政権への政権交代が起こり、激しい政策転換の波が起こっていた。

 

まず、消費税が20.5%に引き上げられ、それに呼応する施策として、徹底的な歳出削減の政策が断行され、これまでのすべての公共事業に対して、まず、一律20%の削減が義務づけられた。さらに、中立的な機関による、すべての公共事業に対する投資効果の総合評価・判定・見直しの作業が進められており、この10月中に、具体的な事業項目ごとの削減幅が公表されることになっている。

 

私が、訪れた英国グラウンドワーク連合体やグラウンドワークトラスト、各社会的企業も、この政府の急激な政策転換と新たな歳出削減策に適応できる体制強化を進めるべく、組織体制の見直しや資金確保の新たな手段の検討など、生き残りのための必死の取組みに着手していた。

 

大きな政策転換の要点としては、「補助金制度から契約制度」への転換といえる。例えば、英国グラウンドワーク連合体においては、年間の総事業費230憶円の内、約70%が政府からの補助金に依存してきた。

 

また、社会的企業にしても、多くの事業は、政府からの補助金に依存しており、英国流の「小さな政府」とは、日本的な解釈をするなら、NPOや民間企業が、それぞれの特性を発揮して、より効率的な公益的なサービスを補助金の多様な運用を通して提供してきたシステムといえる。

 

しかし、現実的に政府の財政赤字の拡大とEU諸国内における財政規範の制約などにより、より厳密な歳出削減が求められることになり、若き指導者であるキャメロン首相も、今までの政権と比べ、より厳しい補助金の運用と支出の政策転換を迫られたと解釈できる。

 

日本においても、補助金のあり方は、民主党への政権交代の中においても、大きな政治的テーマに位置づけられている。しかし、縦割りの行政組織や官僚依存による政策形成システムなどの抜本的な改革が進まない現状では、「補助金脱脚」への構造改革の具体策は遅々として進んでいない。

 

このような中で、英国での公的資金の供給システムのダイナミックな変化は、当事者にとっては、大変厳しい現実だと思ったが、実際に話を聞いた多くの関係者からは、当然の流れ、現実として受け取っており、その劇的な変化に見合った体質変化や組織強化の方向性を懸命に模索していた。

 

自分たちの社会的な役割は、今後とも揺ぎ無いものであるとの自信とともに、時代の変化に適合した、新たな市民目線の公益的なサービスを、どのように創造・創業していったらよいのかの真剣な試行錯誤と挑戦的な意欲を強く感じた。

 

日本においては、NPOの存在と役割は、政府も市民も、ある程度は理解し、支援・強化の方向に進んでいる。また、最近は、社会的企業の存在についても、マスコミによる報道も活発化して、起業する若者も増えてきている。

 

しかし、英国との根本的な相違は、政府の構造改革の動きとNPO・社会的企業などの社会的必要性や組織成長が、重複していないことにある。政府による歳出削減による公益的サービスの低下や劣化、縮小を一体誰が、どのように担っていくのかの議論や検討が少なく、一方的な政策転換の議論になってしまっている。

 

英国においては、政府とNPO・社会的企業による、公益的なサービスの提供に対して、より効率的で質の高い運用を前提として、相互の役割分担と支援システムのあり方の議論が活発に行われている。

 

補助金制度から契約制度への転換は、あくまでも、より効率的で質の高い、地域の実態や住民の要望に適合した、公益的なサービスの提供を実現するための手段といえる。常に、行政と市民・NPO・企業とが、一体化して、相互の信頼関係を前提とした、新たな関係づくりのプロセスである。当然、効率性や合理性は要求されるが、NPOや社会的企業が本質的に内在している、弱者対策や地域コミュニティ形成、地域福祉、人材育成、貧困対策、自立育成、中間支援などの総合的な力を尊重し、より実効性の高い、波及効果を望める政策提言を期待しての政策転換だと感じた。

 

例えば、今回、訪れたロンドン郊外のグラウンドワークトラストだが、犯罪者歴のある人々を職員として雇用し、社会教育と更生活動をマッチングさせた廃棄物処理会社「ブルースカイ」を経営している。この制度の運用により、再犯率は劇的に減少し、正規職員としての就業率も上がっている。

 

私も、何人かの元殺人犯や凶悪な犯罪者と話したが、皆、「この場所に来て、自分を変えられた。新たな生きがいと社会的な役割を見出した。生きて行くことに自信を得た。自分で働き、汗を流し、給与を得る喜びを知った。今後とも、貧しくても自立して働いていきたい。」などと、生き生きと発言していた。

 

犯罪者対策は、一般的には、檻・刑務所に入れて社会と隔離してしまう。しかし、「ブルースカイ」のように、現実社会の中で、労働を通して、更生活動を行うことの効果と意味は大きいし、NPOや社会的企業でなくてはできない。

 

会社を自らが運営管理することを通して、現実社会の仕組みやルール、規範などを教育していく「更生システム」のアイデアと効果の高さには驚いた。日本においては、刑務所も少年鑑別所も収監者で一杯だと聞く。また、再犯率も高く、保護司や民生委員による更生システムも予算的にも人的にも脆弱だといわれている。行政による更生システムに限界が来ているのではないのか。

 

このように、政府の役割が委縮すると、社会的な歪・隙間が拡大して、対応策が見いだせなくなり、社会は不安化、混乱する。やはり、政府に代わるサービスの担い手が必要となり、NPOや社会的企業の役割は必要不可欠となる。

 

こんな簡単な仕組みが、日本ではあまり理解されていない。「新たな公共」のあり方が、議論されている昨今、地方分権・地方主権の議論とともに、NPOや社会的企業を支える人材育成や起業化へのマネジメント力・ビジネス力のスキルアップの強化策は欠かせないし、今、グラウンドワーク三島が内閣府の交付金を得て取り組んでいる「グラウンドワーク・インターンシップ」事業は、時を得た事業だと感じた。

 

今後、調査した社会的企業の概要については、報告する。マンマ・ミーアとジャジーボーのミュージカルは、爽快で大変、楽しかった。久しぶりの気分転換もできたし、新たな知識やアイデアも仕込んだので、いろいろな困難に立ち向かっていくための元気の燃料補給ができた。

 

また、各地のパブでの美味しいビールによる痛風も起こらず、ラッキーな旅になった。この幸運に感謝して、今後も、頑張るぞ。

2010/9/24 9:44 ( メイン )
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