事務局長のつぶやき 平成28年9月3日
「水の都・三島」が壊されてしまう危機
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皆さん、富士山からの美しい湧水が街中を流れる「水の都・三島」の落ち着いた情緒的な雰囲気と素敵な水辺環境が壊されてしまう危機が拡大しています。
さらに、次世代に今後の三島市の発展の「礎」として残し、引き継いでいかなくてはならない、貴重な三島市民の土地が民間企業に売却され、その運営も一方的に委ねられ、将来への経営破綻の懸念も想定されます。
以下、三島駅南口の駅前再開発事業の経過と現状を踏まえ、私なりの考え方を率直に書いたものです。皆さまからの忌憚のない、ご意見やご助言をいただきたいと思います。
現在、三島市は三島駅南口の駅前再開発事業を進めており、「西街区」にはホテルの建設を、「東街区」には高層マンションと商業施設、駐車場等の建設を計画しています。行政は、現在までのグランドデザインの策定やパブリックコメントの実施、各市民団体からの意見聴取、市民への説明会の開催などにより、市民の理解や三島市議会の合意を得ていると判断し、実現化に向けて着々と事業を進めています。
今後、市民が市長や市会議員、市に対して、積極的に多様な意見や提案したり、事業化に対しての懸念や疑問、問題点を指摘したり、具体的な行動を発起していかないと、本年度中に、「西街区」でのホテル建設と「東街区」での高層マンション等の建設は、確実に事業化され、今後、取り返しのつかない状況に追い込まれてしまうと思います。
今こそ、本事業に対する三島市民の的確な判断力と迅速な対応力が問われています。このままでは、三島を支えていく若者たちに残し、引き継いでいかねばならない、発展性のある南口の公共用地・財産を失うことになります。
市民1人1人の力は、小さなものだと思いますが、市民が総意を結集して、具体的に行動することによって、私たちがゴミで汚れていた源兵衛川の水辺再生を多くの協力者とともに成し遂げたように、今の事業を「見直し」させることができるものと確信しています。
今こそ、私たちは、「西街区」の公募を見直しさせ、今後、多様な関係者との時間をかけた総合的な駅前再開発整備構想の検討と議論を深めることが求められています。今後、東京オリンピック終了後を見据えた、4年後以降の三島市のまちづくりの将来像や方向性を考えていくことの方が、拙速に今、ホテルや高層マンションの建設を進めることよりも正しい判断・対応だと思います。
人口減少や高齢化が拡大することは、全国各地の共通した社会的な課題です。その解決策を、既存の開発一辺倒を踏襲した計画に頼ることは、時代遅れの陳腐化した対応として、今後、批判され、反省する時期が、すぐに到来すると思います。
市内には、湧水による多くの美しい川が流れ、神社やお寺、路地、飲み屋街など、情緒ある街並みが今も奇跡的に残り、多くの観光客で賑わっています。緑と水・自然にあふれる街、それが三島の人気の原点・観光資源・宝です。まだ整備の行き届いていない御殿川の水辺環境や浅間神社周辺の水の杜整備計画の実現、空き家の利活用など、これまで、市民協働により進めてきた、「平面的なまちづくり」を、さらに強化・発展させていける、多様な魅力的な「水の仕掛け」「観光資源」「経済資源」がたくさん点在しています。
私たちが関わる「グラウンドワーク三島」は、「明日への環境賞」(朝日新聞社)や「あしたのまち・くらしづくり活動賞『内閣総理大臣賞』」((公財)あしたの日本を創る協会)、「地球環境大賞『環境地域貢献賞』」(フジサンケイグループ)、「地域再生大賞『大賞』」(共同通信社・地方新聞46紙)、「市民普請大賞『グランプリ』」(土木学会)、「緑の環境デザイン賞『国土交通大臣賞』」((公社)都市緑化機構)、「日本水大賞『環境大臣賞』」(日本水大賞委員会・国土交通省)など、国内のほとんどのまちづくりの賞を受賞してきました。これは、水辺空間をまちづくりに活かした平面的なまちづくりと、市民・NPO・行政・企業とのパートナーシップによる地域協働の取り組みが評価されたものです。
今回の「西街区」や「東街区」の計画策定のプロセスは、今まで蓄積してきた、「市民総参加・市民協働」による開かれたプロセスや、何十回・何百回もの議論の蓄積はありません。
コンクリートの建物による集中的な商業施設の展開や特定の民間企業に全面的に依存した経済的な発展には限界と危険性があります。他地区の失敗・破綻の事例を見ても、時代錯誤の根拠なき幻想の計画が原因になっており、三島市においても同様の問題が想定されます。三島市民は、それらの危険性を自分事として感じ、今回の「西街区」について、「見直し」の声を上げていただければと期待しています。
さて、「西街区」については、8月25日に「三島駅南口観光交流拠点整備事業・提案競技事業者」の募集要項を、市のホームページに掲載したことから、本事業が本格的に開始されたといえます。本当に、本事業が始まってしまったのです。
この事実・現実を前に、私は、市による一方的で強引な事業の進め方を「見直し」できないかと考え始めています。個人の力の限界や無力さは承知していますが、何かの具体的な行動・意思表示を起こさないと、将来的に後悔と禍根を残すことになるのではないか危惧しています。
三島市の貴重な「西街区」の土地・3,404㎡を、路線価で比較しても安い最低売却価格・約4億7,414万円・坪45万円程度で、民間企業に売り渡すことは、不自然さと無理を感じ、今後に大きな問題を起こすことになるのではないかと心配しています。
また、多くの疑問点が浮かびあがってきます。
第1の疑問は、三島市の貴重な土地を民間企業に売却し運営を一任してしまうことは正しい判断なのでしょうか。沼津駅南口の衰退の現状や鳴り物入りで進められた青森市の再開発ビル「アウガ」の破綻などを目にすると、今後の日本経済の現状を踏まえ、東京オリンピック以降の日本経済の衰勢に大きな不安が予測され、その経済的な影響を三島市も受けるのではないかと心配しています。
もしも、このホテルが経営難に陥ったら三島市にはどんな悪影響を及ぼすのでしょうか。売却してしまったのでは、市民には、その「裁量権」がなくなり、どうすることもできなくなります。市長が主張する、一流企業だから大丈夫だとの保障はどこに根拠があるのでしょうか。やはり、この南口の土地は、今後の三島市の発展を支えるための優良資産・公共用地として、利活用していく事が大事だと考えます。
第2の疑問は、今回の土地に隣接する既存のお店や建物などが、現状のままで残されてしまい、「西街区」での広域的な今後の開発が不完全になってしまうことです。民間企業の開業を一方的に優先させることにより、長期的な視点に立った「西街区」の総合的な開発が阻害され、三島市の将来的な発展に大きな支障と禍根を残すことは明白です。隣接地との一体的な開発と長期的な視点に立った将来ビジョンの策定が必要です。
第3の疑問は、楽寿園側にある既存ビル群を含めた、さらなる、総合的な駅前開発計画の策定と検討が必要ではないかという点です。地権者との将来像を見据えた交渉により、例えば、現在の市の土地と民間ビルの土地との「等価交換」を行い、楽寿園側に三島市の土地が一部でも確保できれば、駅前に素敵な森が広がる「セントラルパーク」のような雰囲気の駅前開発が可能となります。
「西街区」でのホテル建設だけという発想・投資では、南口での広域観光交流拠点整備事業は中途半端となり、そんなに人通りが増えるわけでもなく、経済的なメリットは脆弱で限定的です。実際、東横インやドーミンインの宿泊者が街中にはほとんど来ていません。あくまでも宿泊のためです。慌てず、東京オリンピック後を見据えた、長期的・総合的な駅前開発計画の策定と検討が必要です。
第4の疑問は、高層ホテルの建設による地下水へ影響です。現在の予測では、13階以上、高さ30m以上の建物が建設されるのではと予測しています。すると基礎工事のために地盤を10m以上も掘削することになり、地下水への悪影響が考えられます。この場所は、楽寿園の小浜池や源兵衛川の水源となるせりの瀬・中の瀬・はやの瀬などの上流部になり心配しています。
市長は、地質会社による地質調査の実施や分析、さらに、民間企業に地下水の保全対策を委ねるので間違いはないと発言を繰り返していますが、地下水への悪影響が本当にないのかを保障できるものなのでしょうか。「水の都・三島」の命・宝といえる、地下水の流れが阻害・遮断され、水量も減少してしまったら取り返しのつかないことになり、三島の魅力の源と発展の礎が喪失してしまい、「水の都・三島」が根底から壊されてしまう危険性が想定されます。
第5の疑問は、何故、安価な売却価格(約坪45万円)を提示したのかです。私の憶測では、事前調整の経過の中で、このくらいの単価でなくては、民間企業側の利益幅・メリットの確実性が不明確になり進出が保障できなくなるから、こうした単価になったのではないかと考えています。今回、三島市が観光総合案内所や観光トイレなどの施設を撤去することによって、現実的には接道幅が約23m近くに広がることから、実際の価格は坪45万円をはるかに超える額になるものと考えています。
これでは、貴重な市民の土地を、市と公社が余りにも安く、民間企業に売却することになり、特定の企業の誘致と利益誘導を優先した行政対応と言わざるを得ません。市民に約5億円近くもの「不利益」を与えることが想定されますので、今の公募方法・内容について、今後、その是非が厳しく問われると思います。
現実的に、市民は、この事実と不透明性を、どこまで理解・承知しているのでしょうか。「資金的な動き、事前に合意された暗黙の前提条件、不透明な価格設定と土地評価の方法、審査項目と不均衡な配点、審査の閉鎖性」など、今後の対応による情報公開の請求や監査請求を含めて、市民目線での市長や市、公社、市議会に対する、公正性と透明性の追求と監視が必要とされています。
第6の疑問は、「西街区」と「東街区」との一体的で整合性が取れた整備計画の策定と検討がなされているかです。やはり、西街区と東街区、さらに、楽寿園側のビル群の区域全体を考慮した南口周辺の一体的な再開発計画の策定が必要とされています。それぞれにどんな機能の施設を誘致・建設・運営したら、伊豆の顔・玄関口として、より以上に三島市が賑わい、発展していくのか、静岡県や国、専門家、市民を巻き込んだ総合的な検討と議論が求められています。
最後に、私が考える三島駅南口・駅前再開発整備計画です。
地下水と水辺環境の保全、情緒ある平面的なまちづくりを優先して、市内の空き家や商店の利活用による「街中再生」を目指します。現在、市内に約1,400戸もあるといわれている「空き家」を、改修・整備することに対し、市による積極的な支援・対策が実施されることにより、国内外からの移住・定住者が拡大すれば、多様な魅力的な店舗の進出を含めて、街中に観光客の流入が拡大・増加して、経済的な振興が期待できます。
今回の高層マンション建設では240戸程度の居住者増、ホテルは駅前に限定された1日150人程度の訪問者だと思います。「街中再生」の方が、雇用の場の確保や市への税収見込みから判断しても、街中に居住者や観光客が増え、市に対して、総合的・全体的な波及効果がはるかに大きいと考えています。
さらに、「水の都・三島」の大切な地下水や環境に与えるリスクは、まったく心配することは無く、源兵衛川の水辺再生と同じように、今ある三島の地域資源・環境資源の再活用策といえ、財政的な観点から評価しても、効率的なまちづくりへの展開が期待できます。 |
このようにして再考され、多くの評価を受けた、三島のまちづくりの基本系は、市民総意をベースにした、地域協働の事業推進の仕組み、スタイルになるはずです。今回の市が発表した計画は、行政の強引な指導性のもと、特定の企業の開発意欲に全面的に依存した、市民不在の事業推進だと私は評価しています。国内外に誇る、市民参加の三島のまちづくりとはいえません。関係者は、謙虚に事実関係を確認して、西街区の公募の見直しを含めて、猛省を望みます。
現在までにさまざまに計画された、駅前再開発事業が実現に至らなかった理由は、経済的な理由や進出企業の都合だけではないと思います。事業化のプロセスの中において、決定的な部分で行政の詰めが甘く、根幹的に何かが欠けていたために「動脈硬化」を発生して、円滑に事業が進まなかったのではないかと考えています。
市長や特定の企業との取引や事前交渉により、今回の物事が成立しているとしたら、今後、間違いなく、どこかの時点で、その不透明性や事実関係が明らかになると思います。市民はそのプロセスを監視・追跡し、的確な判断を下していかなくては、品格ある三島を守り、伝えていくことはできません。
今まで、いろいろと憶測による失礼な記述があるかと思いますが、私の多様な「人的ネットワーク」から提供された、現実味のある情報を書かせていただきました。
今後とも、私たち、「グラウンドワーク三島」は、歩いて楽しい、情緒と品格にあふれた魅力的な「水の都・三島」を創り、守っていくための創造的な市民運動に取り組んでいきます。皆さんのご支援とご助言をお願いいたします。
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