グラウンドワーク三島の活動で癌が治る?

 皆さん、グラウンドワーク三島の活動に関わっているボランティアのメンバーの内、癌を患っていた3人が、グラウンドワーク三島における日々の活動を通して、癌が、「完治」したとしたら、この事実を信じられますか。

 

 実は、この本当に信じられないようなことが起きたのです。現在、グラウンドワーク三島の参加団体として、さまざまな場面で連携・協力している「遊水匠の会」のリーダー的な役割を担う、3人の仲間が、それぞれに前立腺癌、直腸癌、胃癌を患い、それぞれに大手術を受けた後、身体ともに疲労困憊し、いつもの元気を失っていました。

 

 特に、その会の代表者は、奥様も事故による後遺症により認知症が現れ、その後、パーキンソン病を併発するなど、自分自身が癌を発症する前に、大変に苦しい妻の介護の問題を抱えていました。しかし、彼は、約3年間にわたって、自分一人きりで妻の介護を在宅で果たしました。

 

 現職中は、仕事上で外泊することが多く、ほとんど家にいることがなかった、いままでの自分の人生を猛省するかのごとく、妻の介護に献身的に関わり、洗濯や食事、身の回りの世話など、すべて自分一人で背負い、逃げることなく辛い現実と対峙してきました。

 

 彼から時折、吐き出すように聞かされる事実を、言葉や文章で書くことは簡単なことである。しかし、この逃げ場のない、介護の厳しい現実を突きつけられた人間にとっては、「何故、今まで、家族のために、妻のために、懸命に働いてきた自分なのに、こんな年になって、こんな仕打ちをうけなくてはならないのか」の悔しい思いや自問自答の感情が湧き出てくることは理解できる。

 

 近くに生活する子どもたちも、自分たちの日々の生活に、追われ、一人奮闘する父の努力は分かるが、現実的に、母の日々の介護までを手伝うことはなかなか難しい。まさに、妻との真剣勝負の日々が続いていた。昼夜を問わない介護生活に、遊水匠の会への参加も遠のき、携帯電話による呼びかけにも返信の電話も少なくなった。

 

 こんな精神的、肉体的に追い詰められた時に、彼に、何気なく声をかけ、顔色や心の変化に注意をはらってくれたのが、遊水匠の会の仲間たちであった。ともに、65歳以上の高齢者であり、サラリーマン生活を経験したリタイア組でもある。作業時には意見が合わず、よく喧嘩もしていたが、潜在的な波長が合うのか、最後は話がまとまり和気あいあいと、水車や天水尊を製作してきた、セカンドステージにおける人生の友、ボランティア仲間といえる。

 

 彼が、活動にこないと自宅に自家製の野菜や手打ちそばを持っていき、旅行に行けば、お土産を持参し、世間話に花を咲かせ、彼の気分転換を図ってきた。馬鹿話の中から、彼も元気を取り戻し、彼独特の大きな声と自信にあふれた行動力を取り戻していった。

 

 残念なことに、奥さんは病状が進行し、医療的にも在宅介護の限界を超えたことから、施設に入ることとなり、とりあえず、彼自身による介護の現実からは解放されることになった。そのほっとした矢先に、今度は、自分に前立腺癌が見つかり、手術が迫られた。

 

 追い打ちをかける不幸の連続、我々も何と慰めていいのやら悩んだ。しかし、大人の仲間は、人生いろいろの修羅場を経験しており、淡々と彼を励まし、前向きな対応を促した。その後、大手術を経て、体調が思わしくない状態でも会の活動には参加していた。

 

 私も、彼や生きがいの場の様子を見るにつけ、大いなる「人間再生」には、やはり、生きる目標、やりがいを提供させていただくことが、一番の「良薬」ではないかと考えた。そこで、廃屋化していた牛小屋を農村カフェに改修する工事や、今回の地域社会雇用創造事業に関わり新事務所の手作りによる整備を彼らに依頼することにした。

 

 3人とも体調がおもわしくない状況での依頼ではあったが、やはり、長く、ともにグラウンドワーク三島の活動を支え合ってきた仲間、快く承諾していただき、作業が始まった。動くと痛みが増幅する体調の中で、本当に懸命に、多様な工夫やアイデアを出しながら整備に取り組んでいただいた。

 

 休憩中の彼らの会話には次第に声の張りが戻り、以前の馬鹿話も絶好調となっていった。本当に人間とは、現場で働き、汗を流すことによって、本来の純粋な自分を取り戻せるものだと思った。痛い足を引きずりながらの作業だが、楽しそうに、生き生きと作業をこなしている姿を何十回となく見た。

 

 やはり、グラウンドワーク三島が活動の理念として大切にしている「右手にスコップ・左手に缶ビール」の合言葉は正しいと実感した。現在、政治家と官僚は、生活現場から乖離し、思惑と利害の中で、諸般の政策を進めている。こんな思考回路や意識で、各地域で迷走飛行、思考錯誤をしながら、新たな活動に合致した取組みに努力している、各種の現場関係者の思いや悩みを正確に把握・理解できているのであろうか。

 

 自分の今の立場や権力を盾に、上から目線と思いこみの視点により、身勝手な判断をしているのではないのか。多様な物事に取り組んでいる自分にとっても、日々、ボランティアの現場で地道に活動に取り組んでいただいている仲間の苦労や悩みを認識、把握できなくなっては、足元が脆弱化し、何のための活動をしているのか迷走してしまうと危惧している。

 

 グラウンドワーク三島も、この20年間にわたり、多様な人々と関わってこられたのは、遊水匠の会のシニアメンバーではないが、お互い同士を思いやる、「共助」の信頼関係ではないかと思う。お金の力や立場では、ボランティアの世界では多様な人々を動かすことはできない。

 

 関係者相互に日々の生活や精神状況を含めて、関心を持ち合う、「心の絆」の交流があってこそ、無償の善意の活動が支えられている。まずは、この「心の信頼関係」を構築することができなくては、持続可能な活動の発展的な展開は不可能である。

 

 この「共助のしくみ」は、問題を抱えた現場での具体的な課題解決への取組みの中から育成されるものであり、必要論や総論、思惑の中からは絶対に育たない。私も、大いに飲みながら、グラウンドワーク三島の現在の多くの仲間とともに、壮大な夢を語り合い、仲間とともに、それらの夢を現実化してきた。

 

 「ゴミ捨て場化していた源兵衛川の再生、消滅した三島梅花藻の復活、腰切不動尊のお祭りの復活、雷井戸の泉トラスト運動による取得、富士山頂への環境バイオトイレの設置、多くの環境NPOの設立」など、決して一人ではできない、ドラマチックな創造的な取組みを仕掛けてきた。これらが成就できたのは、思いと問題意識を一つにした、多くの仲間の存在と献身的な活動があってのことである。

 

 人は、家族や妻との関係が最も濃密な人間関係だと思い込んでいる。当然だとは思うが、これから進行・拡大する「無縁・孤族社会」では、その思い込みが通用するのだろうか。

 

 ところで、NPOやボランティア活動は、組織や活動のマネジメントやビジネスの知識の重要性が叫ばれている。私自身もその必要性を力説し、今回の地域社会雇用創造事業においても、研修の目的の中心に位置付けられている。

 

 しかし、現実的には、組織の最大のマネジメントは、いかに多くの人々とつながりを持てるのか、持てているのかではないかと考えている。自分たちの思いを多くの人々に真摯に伝え、確固たる人間的な信頼関係を築けるかが、組織力強化の証ではないかと思う。

 

 現在、グラウンドワーク三島が全力で取組んでいる地域社会雇用創造事業「グラウンドワーク・インターンシップ」の第I期研修では、400人以上の人々が全国各地より参集した。最大の成果は、私は、多様な人々の思いや気持ちが相互に交流でき、お互い同士が、「元気の息吹」を交換できたことではないかと考えている。

 

 行政は、とにかく成果の数字を求める。その要求は、当然であり、目標通りの人数と成果は出す。しかし、閉塞感に満ちた現在の日本、グラウンドワーク三島が蓄積してきた多様な現場モデルを体験し、ノウハウを学び、私たちの仲間と思いや悩みを交換することが、事業の「質」を高めるためには大切なことだと考えている。

 

 平成23年1月30日、遊水匠の会のメンバーが精魂込めて製作してくれた、腰切不動尊の銅吹きの屋根と建物の改修を祝う、落慶法要が執り行われた。地域住民を含めて、100人近くの人々が集まり、彼らの職人芸の素晴らしさに驚きの声を上げ、誇らしげな3人の姿が特に印象的だった。その後、ともに昼食をとったが、懐かしい、昔話に花が咲いた。

 

 本当に活動の持続には、事務方としての苦労と困難、障害は絶えない。しかし、彼らや多くの仲間の存在は、グラウンドワーク三島の人的な「宝物」だと、より以上に実感した。今後とも、グラウンドワーク三島の足元での地道な活動を継続させていくとともに、全国各地のグラウンドワーク地域ブロックとの強固な連携をベースとして、韓国を含め、グローバルな範囲での活動を発展的に取組んでいくものである。

 

 仲間と自分の老後対策・セーフティネットを含めて、グラウンドワーク三島のさらなる活動は、福祉や介護分野にも拡大していくような気がする。ああ安心。

2011/1/31 0:00 ( メイン )
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