【1/9更新】9/8~9/17英国スタディツアー2019レポート

【2020年1月9日追記】

英国スタディツアー2019の報告書が完成しました。

 

都留文科大学や立教セカンドステージ大学の参加者による報告書では、
今回のスタディツアーで訪れた視察先の概要や、

参加者の皆さんの感想など、それぞれ充実した、熱い思いが伝わる内容となっています。

 

イギリスの先駆的な社会的企業や、市民セクターの活動から、
日本の課題や問題についても考えさせられる、全54ページの報告書となっています。


市民活動、社会的企業に興味のある方、イギリスに社会に興味のある方
ぜひ一度ご覧ください!


英国スタディツアー2019 報告書(PDFファイルが開きます。)

 

 

 

1日目:9月8日(羽田空港~バーミンガム)

 さあ英国でのグラウンドワーク研修に向けてヒースロー空港に着陸です。爽やかな秋の気配と涼やかな快適な気候の中での英国グラウンドワークスタディツアーが、都留文科大学や立教セカンドステージ大学の学生やNTCインターナショナルコンサルタント、グラウンドワーク三島の皆様などと始まります。写真には混乱の舞台である国会議事堂やバッキンガム宮殿が見えます。
 まずは、ヒースロー空港からバーミンガムまで高速バスの旅です。そして、参加者との打ち合わせを兼ねた交流会、飲んではリスクの高いビールを一杯飲んでしまいました。深く反省です。今回の研修でまたまた新たな情報と先進的な知恵・発意・アプローチを学べるのではないかと興奮しています。
 毎日、英国視察報告を発信していきます。期待してください。

 

 

 

2日目:9月9日(バーミンガム)

 本日・令和元年9月9日は、バーミンガムでの視察研修です。まず、午前中は「英国グラウンドワーク連合体」において、グラハム常務理事より、長期的な戦略や現場での具体的な課題解決のノウハウなどについて熱く語ってもらいました。
 国や地域を幸福にできるのは人であり、その政策立案能力と執行能力を育成できるのは中間支援団体であるグラウンドワークの役割・機能であることを力説していました。
 午後からは、ディグベス地区の社会的企業を取りまとめる、ISEの役割や就労支援の雇用確保・精神疾患患者の改善・自然食品のお店・社会的弱者対策のカフェなど、区画整理事業が迫る廃屋の建物を斬新にデザインして活用・再利用した先進的な地区を視察しました。
 とにかく、どこもまずは組織が自立・永続していくための資金的確保・ビジネスプランの策定が先決であり、利益を生み出し、職員に安定的な給与を支払い、差益をさらに公益的な活動として社会に還元する経済的・社会的循環システムの構築に努力していました。
 社会の歪み・課題に大胆の挑戦するボランタリーセクターを行政・政治が口を挟まない補助金として支援することは日本ではありえない仕組みです。
 だから、市民社会が成熟せず、行政依存の体質が継続される社会システムの「負の連鎖」が、日本に発生し、地域の衰退を招いている要因だと思います。安倍首相よ、英国のしたたかさを学びなさい。本日は、市内各所を13500歩も歩いた充実した1日でした。

 

 

 

 

 

3日目:9月10日(コッツウォルズ)

 本日の英国グラウンドワークスタディツアーは、英国の原風景が残るコッチウオルズ地域にある、バイブリーとボートオンンザウォーターを視察しました。
 古き良き歴史的な英国の建物が残され、ホテルやショップ、カフェなどとして活用、高度利用されています。英国ナショナルトラストが村全体の「地域経営マネジメント」を担い、観光客の集客による資金確保を図り、地域の維持を担保しているからこそ今も田舎が価値ある地域として維持されているのです。
 午後からは、このコッツウオルズ地域の景観保全、環境保全のマネジメントを総合的・横断的に担う、コッツウオルズ委員会を訪問しました。資金の多くは行政に依存しているものの、生物多様性や歴史的継承、原風景の維持管理などを基本的なコンセプトとして、この田園地帯の大局的な管理を民の力と行動力で担ってきています。
 体験ツアーとして、各畑を仕切る石垣の補修作業を経験し、崩壊していた古い石垣を元の姿に復旧する作業を進めました。やはり、三島の現場体験の蓄積が功を奏して、迅速に的確に石垣の復旧を仕上げることができました。
 自然農法に取組むの農家さんの話も聞き、地元放牧牛との振り合いや牧場の散策も楽しみました。本日も1万歩近く歩き、その後の飲み会を含めて疲れました。寝ます。

 

 

 

4日目:9月11日(オックスフォード)

 本日・令和元年9月11日の午前中は、オックスフォード学園都市の視察です。歴史的な建造物や世界の頭脳・知の発信基地と称される知的都市をつぶさに見て回りました。やはり都市の原点・原風景を頑なに守り、維持しながら、その変化のない魅力を観光資源に活用した結果、今、観光客で賑わっています。
 三島駅前での高層マンション建設により、街の活性化を実現すると豪語している豊岡武士三島市長やその構想に賛同する市長派の市会議員、三島商工会議所の役員などは、ここオックスフォードに来て、深遠なる街づくりの戦略・コンセプトを学ぶべきであり、いかに今やろうとしていることが陳腐で時代に逆行しているかについて自覚するべきです。昔からの地域特性に整合した街づくりが無理がなく、市民感覚に適合しています。
 午後からは、タックリー村の「コミュニティ・ショップ」を視察しました。寒村としてパブや郵便局、商店、行政の出先機関などが無くなり、廃村化した農村を地域住民が資金を出し合い、地域会社を創業して生活環境の利便性を向上しました。また、移住者を含めたコミュニティ・共助の仕組みを創り上げで助け合いの新たな人間ネットワークを構築しました。今では、新規の宅地開発も進み、子育てセンター・デイセンターも開設され、若者の移住拡大が進んでいます。英国国内に300箇所ありここタックリー村は2番目の先進地です。
 村や街は市長や行政のものではなく、自分たちのものであるとのコンセプトでバーバラおばさんの指導性のもと、この村の再生と拡大が進んでいます。今の日本の村づくりのやり方では永遠に農村地帯の衰退が続きます。政治家や行政マンはここに学びに来るべきです。今夜はシーフードです。

 

 

 

 

5日目:9月12日(ブライトン)

 本日・令和元年9月12日、午前中はセブンシスターズの散策でした。往復、8000歩歩き、海岸線の景勝地を涼やかな気温の中、見学してきました。周辺はエコパークに指定され、田園地帯が行政の指導監視のもとで、厳しく管理され、類い稀な自然景観が保全維持されています。自然の風景に見えますが、恣意的に専門的につくられた景色なのです。
 午後からはブライトン市でのエコパークのコンセプトについての説明を受けました。開発行為が進行・拡大する人気の都市空間・海岸空間・田園空間をエコパークに指定することにより、乱開発を抑止・防止する政策を推進しているブライトン市の長期的な街づくりの戦略性に驚きました。
 開発を良しとせず、今の姿を維持することに重点を置く、自然体の政策に関心しました。環境保全・地下水保全、景観保全・高さ保全・色彩保全・並木保全など、旧来のブライトン市の原点を逸脱しないように「地区計画」を的確に立案・策定していました。三島は高層マンション建設を強行しようとしています。私たちが水辺再生に重点的を置き、今の素敵な水辺自然空間が広がる魅力的な水の街を創り上げてきたのに壊そうとしている愚行に呆れます。
 世界の街づくりのトレンドは「原点への回帰」です。こんな視察の感想や人生の機微、学生へのメッセージ・アドバイスなどNTCグループや学生とともにバスの中で大いに意見交換しました。通訳をお願いした松田徳子さんの慰労会で盛り上がり2次会もパブも盛り上がり歩き疲れた1日が終わりました。

 

 

 

 

6日目:9月13日(ロンドン)

 本日・令和元年9月13日の午前中は、ロンドンハックニー地区にある社会的企業・「ハックニー・コーポラティブ・ディブロッブメント」を視察しました。
 ダウンタウンとして他民族の低階層の人々が居住する地域であり、泥酔している人やベンチで佇んでいる人が多い、少し、不安な気持ちになる地域です。廃屋化した建物も多く、多くの壁はいたずら書きで汚れています。
 この地区の中心部にあるジレット広場や廃屋化した公共施設をリノベーションして、コミュニティの集いの場に変身させたのが、弱者支援を行う、この社会的企業です。
 彼らの調整により、公共施設が安価で提供され、賃貸業で稼いだ資金を社会還元して、今では、汚れ、危険な空き地が人々が気軽に集うイベント広場に変身していました。
 地区の拠点整備から活動は広がり、貧困層の雇用確保・職業訓練・精神疾患対策・心のフォロー・簡易宿泊場の提供など、不動産業の収入による利益追求型の企業でなく、利益を貧困対策として社会に再投資・還元する社会的企業の先進事例として評価されている地区です。
 午後からは「グラウンドワーク・ロンドン」を訪問して、現場サイドでの活動の具体的事例を学びました。活動は就労支援から心の支援まで多岐にわたり、健全で安全な地域社会の構築に取組んでいる実態を垣間見ました。事務所の庭を活用しての体験型の講義の開講も学びました。明日はバースに行きます。

 

 

 

 

 

7日目:9月14日(バース)

 本日・令和元年9月14日は、ローマ時代に温泉都市として繁栄したバースに行ってきました。街全体が歴史的文化都市であり、建物の高さや色彩に厳しい規制がかかり、自由に改築することはできません。紀元前に造られた「ローマン・バス」が現存し、その温泉施設を見るために、世界中から観光客が訪れ、大変賑わっていました。街の雰囲気を制限・監視して、統一感のある落ち着いた街並みの維持継続を実現して、街の付加価値と魅力を高めています。
 三島も、まだ「水の街」としての雰囲気と情緒がしっかりと残っています。バースに見習い、歴史的な水の文化と価値を、頑なに守っていくことが、世界的な「水の街」としての評価を受けられるのです。なのに三島市民は、三島の価値を理解できないのでしょうか。駅前の高層マンション建設で何が豊かになりますか。街の破壊しかありません。推進している人たちの見識を疑います。
 ロンドンに戻り、夜からは、マンマ・ミーアのミュージュカル観劇です。アバのヒット曲が繰り出す躍動感ある踊りと歌はもう数十回も見ていますが、感動で疲れやモヤモヤ感が吹っ飛びます。また、最後のアンコールでは、立ち上がって踊ってしまいました。気分転換には最高です。後はフィッシュ&チップスとラガーで一杯です。本日は晴天で気持ちの良い1日でした。

 

 

 

 

 

 

 

8日目:9月15日(ロンドン)

 本日・令和元年9月15日は、ロンドン市内各所を訪ね、約12000歩近くも歩きました。私の1日の歩数の新記録です。
 定宿のローヤルナショナルホテルから、大英博物館・世界の宝物を強引に英国に持ち込み展示、英国は上下水道が民営化されたが施設の老朽化が進行し市内各所で水道工事中、道路沿いには数百年が経過した大木が茂るが落葉処理や日陰問題などが大きな障害・社会問題になっていない寛容性、
 レンタルサイクルの利用が盛んでいろいろな利用サービスがあり利便性が向上、1000万人都市ロンドンの中心に位置し市民の憩いの場であるハイド・パークを散策、ハードロック・カフェに行って本年度版のティシャツを4枚購入、ピカデリー広場で佇み、歴史的通路を再整備した商店街を見学
 夜は、人気のミュージュカル・スリラー・ライブ(マイケル・ジャクソンのヒット曲を集大成)を観劇し感激、その後、中華街にて絶品のマーボ豆腐料理などを満喫、大いに気分転換ができた1日でした。
 さあ、明日は帰国の旅です。また激動で濃縮した時間が始まりますが、今回の英国スタディツアーでの刺激と感動、知見を原動力に正義の戦いに果敢に挑戦していきます。やはり、異国での日常生活から乖離した時間は、発意と元気のDNAを刺激します。歩き疲れました。寝ます。

 

 

 

 

 

 

 

9日目:9月16日(ヒースロー空港~成田空港)

 令和元年の「英国グラウンドワークスタディツアー」がほぼ全行程を終えました。私もこれからヒースロー空港に向かいますが、今回のツアーの簡単な感想を書きます。
 英国のボランタリーセクターは、英国グラウンドワーク連合体を含め、人間へのサービスを目的とした「原点回帰」の活動に大きくシフトしていると感じました。多文化共生社会である英国では4人に1人が精神疾患などの「心の病」を抱えており、人間再生の施策が必然的に求められています。路上生活者やアルコール依存、引きこもり、過激ないじめなど、日本でも拡大している深刻な社会問題・弱者対策に対して多様なアプローチで取組んでいました。
 その中で、現場での作業・就労は、精神的・肉体的な健全性を取り戻すために効果的であると、多くのリーダーが発言していました。「働き、汗を流し、給与を得る」この日常性が人間回復に効果があると断言していました。
 また、NPOは「市民会社」でありビジネスを展開して確実に利益を出す、儲けなければ、サービスとしての社会還元ができず、組織存続の意味が無くなってしまうと強調していました。ボランティアの力は大切だが、限定的で持続性が担保できない、持続性があやふやなら社会性や公益性が希薄なので、長期的なビジネスプランが必要だと指摘していました。
 無償の奉仕で社会を改善するのか、有償を前提とした仕組みで社会を変革していくのか、今後、ますます日本のNPOの役割と真価が問われていると感じました。
 街づくりでは、その街の歴史的な地域資源を大切に保全して、その付加価値を活かし、地域振興に発展・連動させていくことが良策だと思いました。三島の駅前で計画されている、コンクリートで固められた高層マンション建設などに依存した街づくりは、ロンドンやブライトン、バースと比較して、間違いなく大失敗すると確信しました。さあ、帰国して「水の都・三島」を守り、伝える市民活動に邁進するぞと意気込んでいます。良き旅でした。

 

 

2020/1/9 19:13 ( 環境教育・視察研修 )
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