【1/18報告書追加】9/7~14「英国スタディーツアー」を開催

2017/1/18 10:26 投稿者:  gwmishima

 グラウンドワーク三島では、9/7~14にかけて「英国スタディツアー」を開催しました。今回はグラウンドワークについて研究されている長野大学、松下重雄教授とそのゼミ生4名、都留文科大学の学生8名の総勢12名の学生が、英国の進んだ市民活動や環境保全、社会的企業について学ぶ研修に参加しました。

 

1日目:2016年9月7日(水) オリエンテーション

 現地集合となっていたことから、ドーハーを経由してロンドンに向かった学生もいれば、前日から先にロンドン観光をしている学生など皆それぞれにイギリスへ入国しました。そして参加者全員、予定時刻の18:30に宿泊場所のロイヤルナショナルホテルへ集合し、オリエンテーションを行いました。

 

 今回の研修の趣旨をはじめプログラムなどを確認し、一人ひとり自己紹介と研修に対する意気込みなどを語り、これから始まるイギリスでの経験に胸を弾ませていました。

 

 

2日目:2016年9月8日(木) オックスフォード視察

 ロンドンから貸し切りバスで1時間半ほど走り、オックスフォードへ向かいました。ロンドンの賑やかできらびやかな街並みとは一変、イギリス特有の農村風景が広がるなか最初の目的地「タックリー・ビレッジ」へ到着しました。

 ここではショップやパブなどを地域住民が運営し、コミュニティビジネスとして取り組んでいます。また、これを支援している「プランケット財団」は、コミュニティの創出や活性化のため主に農村部でショップやカフェ、パブなどを地域住民が主体となって実行できるサポートを行い、タックリーは大きく成果をあげている一つです。

 学生たちは1日、タックリー・ビレッジショップの代表の方や財団の担当の方からの丁寧な説明をいただきました。

 

 経営していく上での苦労や工夫、イギリス農村部の地域再生の全体像をつかむべく、多くの質問を投げかけている学生の姿が非常に印象的でした。

 こまめにティーブレイクをはさみながら、昼食もコミュニティカフェでいただきました。

 

 タックリー・ビレッジでの視察を終えた後はオックスフォード市内も簡単に視察し、2日目の研修が終了しました。

オックスフォードの街並み

 

 

3日目:2016年9月9日(金) バーミンガム視察

 前日の研修後にオックスフォードからバーミンガムへ移動し、3日目は今回の研修のメインとなる「英国グラウンドワーク本部」を視察しました。

 

 ここはバーミンガムに位置する英国グラウンドワークの全国連合本部で、1985年に設立されました。地域組織であるグラウンドワーク・トラストが取り組む全国的なプログラムの開発、大手企業との連携、政策提言など中央本部として機能しています。

 

 英国グラウンドワークの歴史から地域共同の理念や活動の説明を受け、その先進性に日本との大きなギャップを感じる学生も多くいました。日本との問題比較や、事業成果など質問にも詳しく答えていただき、英国グラウンドワークについての理解を深めました。

 

 

運河が流れるバーミンガムの街

 

 この後バーミンガムの街中で簡単な昼食をすませ、この日2つ目の視察場所「タドリ―・カナル・トラスト」へ向かいました。

 ここは鉱山採掘地として栄え、採掘した鉱物や人を運ぶためにトンネルを利用し運河を形成し、地域住民やイギリスの産業の発展のため大きな役割を果たしてきました。しかし、時代の変化に伴い1959年に鉱山は運河とともに閉鎖されることになってしまいました。市民は歴史的な地域資源とみなしそれを保全・管理するためにトラストをたちあげ、今では運河とトンネルをいかした観光資源として活用しています。

 

 私たちはトラストの担当の方から説明いただいた後、実際に乗船し運河を通ってトンネルや洞窟を視察しました。ライトアップや音楽によって観光客を楽しませる工夫が多くあり、市民の力によって地域資源を観光資源へといかすイギリス人の市民力を実感しました。

 

 

 

4日目:2016年9月10日(土) バース、コッツウォルズ視察

 午前中は、ローマ人が開いた保養地であり街全体が世界文化遺産にも登録されているバースを訪れました。

 紀元前にローマ人によって開かれた温泉スパは、ローマ人撤退後は衰退していたが18世紀に温泉の効能が認められてからは上流階級の人気が集まり、温泉跡を中心に賑わっています。

私たちはバースの発端である「ローマン・バース」を見学したのち、それぞれバースの街を散策し歴史的な建造物や街並みに触れました。

 

 午後はコッツウォルズへ移動し、ここでも世界文化遺産となっている建造物や街並みを見学しました。

 まず詩人のウィリアム・モリスが“イングランドでもっとも美しい”と称賛した「バイブリ―」へ。水鳥や天然のマスが泳ぐ澄んだ小川が流れ、石造りのコテージが連なる絵のような風景が広がっていました。

 古いものほど価値があり、老後は静かで自然豊かな田舎で暮らすことが一番とされているイギリス人の感性がよく実感できるそんな場所でした。

 

連なる小屋はかつて羊毛の収納に使われていた

 

維持管理もナショナルトラストによって厳格におこなわれている

 

 次に「ボートン・オン・ザ・ウォーター」へ向かいました。ここは水深わずか10cmほどの小川が村を縫うように流れ、河沿いに急勾配の石屋根に窓と煙突が並ぶ17世紀ごろの石造りの家々が並んでいます。

 水鳥が泳ぎ、子どもたちが川で遊んでいる様子は三島の源兵衛川にも見え、川を中心としたまちの観光地化など共通する部分もあると感じた学生もいました。

 

 世界遺産となっている街の活用や維持管理、街並みを肌で感じた4日目の研修を終え、私たちは美しい田園風景に別れを惜しみながら再びロンドンへ向かいました。

 

 

5日目:2016年9月11日(日) 自由研修

 この日は自由研修として、各々ロンドン市内を散策しました。一日中大英博物館をまわり数多くの芸術品に浸った学生もいれば、有数の観光名所をはじからまわった人、なかには初日に訪れたオックスフォードへ再び向かう人、イングランド南東部へ行く学生もいました。皆それぞれにロンドンをはじめ、イギリスの文化や歴史を存分に味わった日となりました。

 

イングランド南東部「セブンシスターズ」

 

ロンドン市内「ビッグベン」

 

 

6日目:2016年9月12日(月) 社会的企業 訪問

 地下鉄を利用し、この日の午前中は社会的企業「バイク・ワークス」へ向かいました。

 バイクワークスは単なるバイクショップとしてのビジネスだけではなく、社会的企業として様々なコミュニティベースのプログラムやトレーニングも行っています。

失業者のためのトレーニングや心身における障害にかかわらずサイクリングを楽しむプログラムなど、サイクリングを通して社会的弱者の人生を前向きに変えることをモットーに2006年に設立されました。

 

 スタッフのベンさんから説明をいただき、自転車販売店舗やリユースセンターの見学をしました。社会的企業にやさしい社会制度や支援するしくみに日本との違いを発見したと同時に、資金的な継続性や成果を出すことの難しさなどは、やはり共通の課題として取り組んでいるのだと実感しました。

 

 

 お昼を近くの公園でとり、次に2つ目の社会的企業「カルティベイト・ロンドン」へ向かいました。

 カルティベイト・ロンドンは、園芸・農作物技術の獲得をとおしてNEETの社会復帰の支援をおこなう組織で、2010年に設立。若者の雇用機会の促進、都市内の荒廃地の改善、地産地消の促進をテーマに活動しています。ロンドン都心に3地区の農場をもち、若者のトレーニングをはじめ、地域住民や企業が参加する活動など、ファーマーズ・マーケットへの出店など、さまざまな実践的活動をおこなっています。

 事務局長のエイドリアンさんから説明をいただき、着実な事業成果をあげていることや、一方でNEETの子どもたちと向き合える人材確保の難しさなどをお話しいただきました。

 

 この日はロンドンを中心に活動している社会的企業2社を訪問し、社会的ミッションをもつ事業に対して、補助金をはじめ社会的に広く受け入れられているイギリスの風土を感じ、その一方で経営のオリジナリティと成果がますます求められている現状を知った1日となりました。

 

 

7日目:2016年9月13日(火) ロンドン市内研修

 英国研修最終日は半日かけてロンドン都心の公園 Regent's Park に環境保全活動団体の TCV (The Conservation Volunteers) が主催する環境活動体験をおこないました。

 TCVは英国最大規模の環境保全団体で、1959年にその前身をもち、しばらくBTCV(British Trust for Conservation Volunteers)の呼称でしたが、2012年より改称。身近な自然環境をフィールドにした環境ボランティア活動を中心に、環境活動体験(「グリーン・ジム」プログラム)、地域環境改善活動、就業訓練プロクラムなど、実践的な環境活動に全国約2,000地区で取り組んでいます。

 今回は、地域のボランティアの方々とともに Camden Green Gym プログラムに参加し、都市の生物多様性を確保するために公園内の野原の草刈り作業をしました。

 

 より良い自然環境を確保するだけではなく、体を動かし汗をかくことや作業を通し生まれるコミュニケーションなど、参加者にとって楽しくやりがいのある活動に身をもって体験することができました。

 

 その後、公園内のハブにて研修のまとめをおこないました。一人ひとり研修の感想や意見を交換し合い、英国在住の小山善彦さん(元バーミンガム大学講師、元グラウンドワークUKダイレクター)より多くのコメントをいただきました。

 

 イギリスの進んだ市民組織やそれを支える制度、なにより市民の社会を変えたいという熱い想いに皆刺激され、どうやって日本で実践できるか、自分たちの活動に活かせるかをそれぞれ考えることができた研修となりました。

 

 

 今回の研修にあたり、同行指導者としてサポートいただきましたグラウンドワーク三島英国アドバイザーの小山善彦さん、グラスゴー大学修士課程の安倍万莉子さん、大変お世話になりました。また、各研修受け入れ先の皆さまに感謝申し上げます。

 

 また参加した都留文科大学、長野大学の生徒の皆さんも7日間という短い間でしたがお疲れ様でした。また今年度中に行われる英国報告会にて皆さんの報告が聞けるのを楽しみにしています。

 

※2019年1月18日追記
参加者の皆様に書いていただいたレポートを報告書にまとめました。
ご興味のある方は是非ご覧ください。
H28英国スタディツアー報告書

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