グラウンドワーク三島では、1992年から環境悪化が進む「水の都・三島」の水辺自然環境の再生活動を展開し、市内から姿を消した清流のシンボル・ミシマバイカモ(三島梅花藻)の保護活動に取り組んできました。
一方、かつて韓国の海岸線にある水田には、春になると白く可憐なバイカモの花々が咲き乱れ、「白い海」と呼ばれていました。しかし、近年の乱開発などによりバイカモは姿を消し、1998年には絶滅危惧野生植物に指定されました。
韓国でバイカモの保全活動に取り組む「韓国ナショナル・トラスト」とグラウンドワーク三島は、2003年より「日韓バイカモ市民交流」を開始し、2004年には環境交流協定を締結しました。2009年には、江華島のバイカモ保全地がラムサール条約湿地に登録されましたが、この登録理由の一つに、日本との国際的な環境保全活動が評価されたことがあげられます。
そこで今回、韓国江華郡の貴重種・バイカモ保護地での保護活動や干潟での環境美化活動体験、韓国の歴史・文化を含めた相互理解のための交流・体験活動に取り組むことを目的とした「梅花藻のふるさと・江華島スタディーツアー」を8/30から9/2にかけて開催いたしました。都留文科大学の学生を中心に10名の参加者が韓国を訪れました。
1日目:2016年8月30日(水)成田からソウルへ
お昼に成田空港を出発し、夕方に韓国は仁川空港に到着しました。そこから地下鉄に乗って移動し、宿泊先のホテルのあるミョンドン駅へ向かいました。
夕食の場では、翌日からお世話になる韓国ナショナルトラストの朴さんや現地の大学生を迎え、夕食の卓を囲みました。おいしい焼肉に舌鼓を打ちながら、現地の方々との交流を深めました。
2日目:2016年8月31日(木)江華島視察
ソウルから貸切バスに乗り、韓国の最北部に位置する島・江華島へ向かいました。
まず訪れたのは、バイカモの生育する貴重な場として韓国ナショナルトラストが保護している水田です。ここで、ナショナルトラストの朴さんと合流し、この水田の概要を説明していただきました。一見、何の変哲もない水田ですが、バイカモの最盛期である5月には、一面バイカモの白い花で埋め尽くされるそうです。
その後、台風の影響もありあいにくの天候の中、水田の周囲の清掃活動に皆で取り組みました。数十分の活動の間に多くのゴミが集まり、参加者一同その量には驚かされました。ラムサール条約にも登録されているこの水田の周りにおいても、このような現状にあることを体感しました。
次に、朴さんよりナショナルトラストの活動をプレゼンテーションにより詳しくお話ししていただきました。バイカモと水田の共生関係や、バイカモの保護が絶滅危惧種であるヘラサギの保護にもつながっていること、水田の環境教育の場としての活用、水田で採れたお米をブランド米として販売しその収益を保護活動に還元するなど、ナショナルトラストの先端的な自然保護活動を学ぶことが出来ました。
お昼には江華島の郷土料理をいただき、午後は江華島の豊かな干潟について学びました。江華島の生物多様性を支えるこの広大な干潟ですが、実際に現地を訪れてみると、やはりここでもゴミの多さに驚かされました。干潟の自然を学ぶことができる湿地センターでは、干潟に住む生き物の生態や江華島の自然の魅力を解説していただきました。
次に向かったのは、コインドル公園と江華島歴史博物館・自然史博物館です。ここには、ユネスコ世界文化遺産に指定されている江華支石墓(コインドル)など、様々な形状の石墓が現存しており、日本ではあまり見ることのできない巨石を用いた史跡を見学しました。博物館では、かつて江華島が高麗の首都だった頃の遺物や、江華島の昆虫研究家の標本コレクションなど、貴重な品々から江華島のことを学びました。
この日最後の行程は、朴さんをはじめ江華島市民団体の代表の方々とともに夕食の卓を囲み、意見交換が行われました。江華島の皆様からは、自然保護活動を続けるうえでの苦労や今後の展望、さらには日本の学生へのエールの言葉を頂き、最後は三島で再会することを約束してお別れとなりました。
3日目:2016年9月1日(木)ソウル市内視察
この日は一日かけてソウル市内の各所を視察しました。
まずは、ソウルの中心を流れる「清渓川(チョンゲチョン)」に向かいました。清渓川は、首都を流れる都市河川として開発や戦争などの影響を大きく受け、1970年代には暗渠化されて姿を消し、その上には高速道路が建設されました。その後、2000年代に入り、清渓川復活の世論が高まったことを受け、高速道路の撤去と河川の復元工事が行われ、2005年に現在の近自然河川へと生まれ変わりました。今では市民の憩いの場としてだけでなく、多くの観光客が訪れる観光スポットにもなっています。
清渓川博物館では、学芸員の方に解説していただき、その劇的で壮大な歴史を多くの展示品や写真とともに学習しました。
その後は実際に清渓川を歩き、現在の清渓川を体感しました。かつて暗渠化されていたとは思えないほど多くの緑に囲まれ、平日にもかかわらず多くの市民や観光客、子ども達が川辺の散策道を歩き、にぎわっていました。一方で、河畔を覆い尽くすほどの雑草が一部散策路まで浸入するなど、維持管理上の問題点も散見されました。市民の力で蘇った清渓川を後世に伝えていくためには、まだまだ課題も多そうです。
異国情緒あふれる市場の屋台でお昼をいただいた後は戦争記念館を訪れました。朝鮮戦争の熾烈な歴史を中心とした展示の数々から、戦争の教訓を学びました。昨今、北朝鮮の動きが活発化する中、貴重な学び・体験を得ることが出来ました。
続いて、かつての貴族や高官が暮らし、韓国の伝統家屋「韓屋」が建ち並ぶ「北村(プクチョン)」や、朝鮮王朝の歴代王と王妃の位牌が安置される世界遺産「宗廟」を見学し、韓国の歴史・文化に対する理解を深めました。
夕食は再び焼肉をいただいた後、世界でも脚光を浴びているショー「JUMP」を観劇しました。「JUMP」は、テコンドーなどの伝統武術やハイレベルなアクロバットを組み合わせたパフォーマンスをベースとしたコメディーショーで、台詞がほとんどないため韓国語が分からない外国人観光客でも楽しむことができます。笑いとスリルと興奮の絶えない1時間半の公演はあっという間で、楽しいひと時を過ごすことが出来ました。
4日目:2016年9月2日(金)研修のまとめと帰国
韓国スタディーツアーの最終日となるこの日は、朝食に干し鱈のスープをいただいた後、最後に、研修のまとめとして参加者の皆さんと意見や感想を共有しました。
参加者からは、
・日韓関係が複雑化する中、実際に韓国を訪れていろいろな歴史や文化に触れてイメージが変わった。
・江華島での清掃活動や街中の散策を通してみても、やはり多くのゴミが目に付いたのは残念だった。
・清渓川の再生事業には非常に感銘を受けた。日本ではありえない事業だと思った。
等の感想をいただきました。
その後、仁川空港から帰国の途に就き、無事成田空港へと到着しました。
ツアーを通し、ガイドと通訳を務めてくださった李さんと、韓国ナショナルトラストの朴さんには大変お世話になりました。ありがとうございました。
今後も、バイカモを通じた江華島と三島の交流がさらに活発化できるよう継続的に取り組みを続けていこうと思います。
参加者の皆様、4日間の短い間でしたが大変お疲れさまでした!
※2019年1月10日追記
参加者の皆様に書いていただいたレポートを報告書にまとめました。
ご興味のある方は是非ご覧ください。
地図 |
住所 | 韓国・江華島 |